「艶あり」を「艶消し」にする調整剤(フラットベース)の落とし穴
外壁塗装や塗装工事において、「艶が気に入らない」「もう少し落ち着いた仕上がりにしたい」と思ったとき、便利なのがフラットベース(艶消し調整剤)です。艶あり塗料に混ぜるだけで、お好みの艶具合に調整できる優れものですが、実は知っておくべき「落とし穴」が存在します。
この記事では、フラットベースの具体的な製品名と共に、使用する際の注意点やデメリットについて詳しく解説します。
フラットベース(艶消し調整剤)とは?
フラットベースとは、艶のある塗料に添加することで光沢を抑え、マットな仕上がりにするための調整剤です。現場で艶の調整が必要になった際に、塗料に一定量を混ぜることで、7分艶・5分艶・3分艶・艶消しなど、さまざまな艶具合に調整できます。
主要メーカーのフラットベース製品
日本ペイント製品
1. オーデフラットベース
- 容量:1kg、3kg
- 用途:水性塗料用(オーデコートGエコ、オーデグロス、水性ファインウレタンU100など)
- 特徴:水道水で希釈するタイプの上塗り塗料に適用
2. 1液ファインウレタンU100フラットベース
- 容量:0.8kg、3.2kg
- 用途:溶剤系塗料用(1液ファインウレタンU100など)
- 特徴:塗料用シンナーAで希釈できるタイプの塗料に適用
- 付属品:計量カップ付
3. マルチフラットベーススーパー
- 容量:900g
- 用途:ウレタン系塗料やアクリル・ラッカーなど
- 特徴:マルチタイプで効きの良い艶消し剤、幅広い塗料に対応
添加量の目安(例:1液ファインウレタンU100フラットベース)
- 7分艶:8~15%
- 5分艶:21~28%
- 3分艶:37~47%
- 艶消し:65~69%
関西ペイント製品
1. レタンPGエコ つや消し剤
- 容量:0.9kg(900g)
- 用途:2液ウレタン塗料(レタンPG80など)専用
- 特徴:
- つやムラになりにくく、塗り肌が滑らか
- 耐水性・付着性などの塗膜性能を低下させにくい設計
- 2液型ウレタン塗料に最適化
2. スーパーフラットベースCM(改)
- 容量:0.8L、3.6kg
- 用途:調色用原色として使用
- 特徴:
- 軽量しやすい設計
- 調色精度が向上
- すかしの白さを表現
3. 2液共通 フラットベース(艶調整剤)
- 容量:3.6kg/缶
- 用途:弱溶剤2液系塗料専用
- 適用可能な塗料:
- セラMレタン
- パワーMレタンEX
- セラMシリコンⅢ
- コスモマイルドシリコンⅡ
- 特徴:複数の高性能塗料に対応可能
4. セルバ36フラット(ツヤ調整剤)
- 用途:関西ペイント各種塗料の艶調整
- 特徴:現場での艶変更に対応
エスケー化研(SK化研)製品
SKつや消し剤
- 容量:0.8kg
- 付属品:計量カップ付
- 用途:弱溶剤形塗料専用(エスケー一液NADウレタンなど)
- 特徴:
- 最大30%まで艶を落とすことが可能
- 急な艶変更や小面積の艶調整に便利
- 在庫削減にも貢献
- 経済性に優れる
注意事項
- 3分艶・つや消しの塗料は艶調整できません
- 弾性系塗料には使用不可
- クリーンマイルドフッソには使用不可
- 屋根用塗料には使用不可
添加量の目安
- 艶有り塗料に対して最大30%添加可能
- 少量ずつ添加して、好みの艶に調整
ロックペイント製品
1. パナロック フラットベース
- 用途:2液型ウレタン塗料パナロック専用
- 特徴:
- 任意の割合で混合することでツヤを調整可能
- ソリッドカラーの艶を半ツヤや全ツヤ消しに変更
- 主剤に対して任意の比率で添加
2. マルチフラット(艶消し剤)
- 容量:0.9kg、3.6kg
- 用途:ロック車両用塗料全般
- 適用塗料:
- マルチトップクリヤー
- 2液型ウレタン塗料パナロック
- 特徴:
- 幅広いロック製品に使用可能
- 硬化剤配合後の塗料に対して混合
注意事項
- 配合データ内のフラットベースの代わりに使用不可
- 本品を配合した塗料は必ずろ過を行ってから塗装
- グロス調整は膜厚、乾燥条件、塗装条件によって変化
3. エコロック マットクリヤーベース
- 容量:3.6kg
- 用途:艶消しクリヤー仕上げ塗装仕様
- 推奨硬化剤:
- 149-6000番級 エコロック ハードナー
- 149-7000番級 グランドハードナー
大日本塗料製品
1. AutoマルチフラットベースⅡ(つや消し剤)
- 用途:自動車補修用ウレタン塗料
- 適用:Autoウレタン硬化剤と併用
- 特徴:4:1クリヤーシステムに対応
艶調整の目安
- 5分つや:主剤に対して一定比率で添加
- 3分つや:主剤に対してやや多めに添加
- つや消し:主剤に対して最大比率で添加
東日本塗料製品
フラットベースF
- 容量:3kg、15kg
- 用途:床用塗料専用
- 特徴:
- 床用塗料に添加して「5分艶」「艶消し」に調整
- ローラー仕上げに最適
- 床塗装の現場で艶調整が可能
各メーカーの特徴比較表
| メーカー | 主力製品 | 容量 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 日本ペイント | 1液ファインウレタンU100フラットベース | 0.8kg、3.2kg | 計量カップ付、広範囲の艶調整可能 | 塗料用シンナーA希釈タイプ専用 |
| 関西ペイント | レタンPGエコ つや消し剤 | 0.9kg | 塗膜性能を低下させにくい | 2液ウレタン専用 |
| エスケー化研 | SKつや消し剤 | 0.8kg | 最大30%添加、経済性良好 | 弾性系・屋根用塗料は不可 |
| ロックペイント | マルチフラット | 0.9kg、3.6kg | 車両用塗料に幅広く対応 | 必ずろ過が必要 |
| 大日本塗料 | Autoマルチフラットベース Ⅱ | – | 自動車補修用に最適 | 4:1クリヤーシステム |
| 東日本塗料 | フラットベースF | 3kg、15kg | 床用塗料専用 | ローラー仕上げ専用 |
フラットベースの5つの落とし穴
1. 耐候性・耐久性の低下
これが最も大きな落とし穴です。フラットベースを添加すると、塗料本来の性能が低下してしまいます。
なぜ性能が落ちるのか?
フラットベースは、塗膜表面に微細な凹凸を作ることで光の反射を抑え、艶を消しています。この凹凸が塗膜の密度を下げ、紫外線や雨風の影響を受けやすくなるため、耐候性が低下するのです。
耐用年数への影響
艶ありに比べて艶消しは、1.5~3年程度耐用年数が短くなると言われています。シリコン塗料の期待耐用年数が10~15年程度であることを考えると、その1~2割も短くなるのは大きな差です。
2. 汚れが付きやすく、落ちにくい
フラットベースで作った微細な凹凸は、汚れの溜まり場になります。
- 表面がザラザラしているため、ホコリや排気ガスが入り込みやすい
- 雨水で流れ落ちにくい
- セルフクリーニング効果が低下
- 艶あり塗料に比べて、外壁が汚く見えやすい
3. 色が濃くなり、想定と違う仕上がりに
艶を落とすことで、色が濃く見える現象が起こります。これは、光の反射が減ることで色の深みが増すためです。
よくある失敗例
- サンプルで選んだ色より、実際の仕上がりが暗く感じる
- 明るい色を選んだのに、重厚すぎる印象になってしまった
- 隣家との色の差が予想以上に目立ってしまった
4. 艶ムラ・塗りムラが発生しやすい
フラットベースを使用する際の技術的な落とし穴です。
ムラが出る原因
- フラットベースの艶消し成分が沈降しやすい
- 混合後に時間を置くと成分が沈殿し、塗装時にムラが出る
- 混ぜ方が不十分だと、部分的に艶の差が出る
- 重ね塗りのタイミングを誤ると、塗り肌が悪くなる
プロの塗装業者が注意する点
- 添加後はすぐに使用する
- 使用中もこまめに撹拌する
- 均一に塗布するための技術と経験が必要
5. 価格が高くなる場合がある
意外と知られていないコストの問題です。
- フラットベース自体の購入コスト
- 添加量が増えるほど(艶を落とすほど)コストアップ
- 艶消し塗料を最初から選んだ方が割安な場合もある
- 施工に技術が必要で、手間賃が上乗せされることも
フラットベースを使う際の注意点
現場での調整は推奨されない?
実は、メーカーや塗装業者の多くは、現場でのフラットベース調整をあまり推奨していません。
理由
- 品質管理が難しい(配合比率のブレ)
- 性能低下のリスクを顧客が十分理解していない場合がある
- 工場で調整された艶消し塗料の方が品質が安定している
塗り替えた新しさが表現できないことも
艶消しにしすぎると、「塗り替えたのに、あまり変わらない」という印象を与えることがあります。塗装工事では、ある程度の「新しさ」を演出したいものですが、艶消し~超低艶では、その効果が薄れてしまうのです。
失敗を避けるためのアドバイス
- 初めての外壁塗装なら5分艶程度が無難
- 3分艶以下は、明確な好みがある場合のみ選択
- カラーシミュレーションだけでなく、実際の塗り板サンプルで確認
それでもフラットベースを使いたい場合
正しい使い方
- 添加直後に塗装する
沈降を防ぐため、混合後すぐに使用開始 - こまめに撹拌する
塗装作業中も定期的にかき混ぜる - 適切な添加量を守る
メーカー推奨の配合比率を厳守 - プロに任せる
DIYではなく、経験豊富な塗装業者に依頼
メンテナンスサイクルを短くする
耐久性が下がる分、定期的なメンテナンスを心がけましょう。
- 通常より1~2年早めの塗り替え計画
- 汚れが目立ったら高圧洗浄でクリーニング
- 艶復活用のクリア塗装を検討
メーカー別の使用上の注意点まとめ
日本ペイント製品の注意点
- 水性用と溶剤用で製品が異なるため、必ず適合を確認
- 添加後すぐに使用し、こまめに撹拌
- 沈降しやすいため保管時も注意
関西ペイント製品の注意点
- レタンPGエコ つや消し剤は、他の関西ペイント製品より塗膜性能低下が少ない設計
- 2液型専用製品が多いため、1液型には使用不可
- つやムラになりにくい配合だが、均一な塗装技術は必要
エスケー化研製品の注意点
- 最も制限が多い:弾性系、フッ素系、屋根用には使用不可
- すでに3分艶・艶消しの塗料には添加できない
- NAD系塗料専用のため、他社製品との混合は避ける
- 最大30%という添加上限を守る
ロックペイント製品の注意点
- ろ過必須:艶消し剤配合後は必ずろ過してから塗装
- 車両用塗料向けが多く、建築用とは異なる
- 膜厚、乾燥条件で艶が変化するため、テスト塗装推奨
- エコロック ハイパークリヤーには専用品が必要
大日本塗料製品の注意点
- 主に自動車補修用のため、建築用途には不向き
- 硬化剤との配合比率が重要
- プロ向け製品で、DIYには不向き
東日本塗料製品の注意点
- 床用塗料専用で、壁面塗装には使用不可
- ローラー仕上げ専用設計
- 用途が限定されているため、汎用性は低い
メーカー選択時のポイント
1. 塗料の種類で選ぶ
水性塗料を使う場合
→ 日本ペイント「オーデフラットベース」
弱溶剤系1液型を使う場合
→ エスケー化研「SKつや消し剤」(ただし制限多い)
→ 日本ペイント「1液ファインウレタンU100フラットベース」
2液型ウレタンを使う場合
→ 関西ペイント「レタンPGエコ つや消し剤」(性能低下が少ない)
→ ロックペイント「パナロック フラットベース」
床塗装の場合
→ 東日本塗料「フラットベースF」
2. 性能重視で選ぶ
塗膜性能の低下を最小限にしたい
→ 関西ペイント「レタンPGエコ つや消し剤」
(耐水性・付着性の低下を抑える設計)
つやムラを防ぎたい
→ 関西ペイント「レタンPGエコ つや消し剤」
(つやムラになりにくい配合)
経済性を重視
→ エスケー化研「SKつや消し剤」
(最大30%添加可能で、在庫削減にも貢献)
3. 用途で選ぶ
建築外壁塗装
- 日本ペイント各種
- 関西ペイント「2液共通フラットベース」
- エスケー化研「SKつや消し剤」
自動車補修
- 大日本塗料「Autoマルチフラットベース Ⅱ」
- ロックペイント「マルチフラット」
床塗装
- 東日本塗料「フラットベースF」
4. メーカー純正品を選ぶべき理由
同じメーカーの塗料とフラットベースを使うことで:
- 相性問題のリスクを最小化
- メーカー保証が適用される
- 技術サポートを受けやすい
- トラブル時の責任の所在が明確
よくある失敗例とメーカー別対策
失敗例1:他社製品を混合してトラブル
ケース
「エスケー化研の塗料に、日本ペイントのフラットベースを混ぜたら、塗膜が剥がれた」
対策
- 必ずメーカー純正品を使用
- 各メーカーは自社塗料に最適化した配合
- 異なるメーカー製品の混合は予期せぬ化学反応の恐れ
失敗例2:使用不可の塗料に添加
ケース
「エスケー化研のクリーンマイルドフッソに、SKつや消し剤を混ぜたら、艶が不均一になった」
対策
- エスケー化研のSKつや消し剤はフッ素系塗料には使用不可
- 製品説明書の「使用不可塗料」を必ず確認
- 不明な場合はメーカーに問い合わせ
失敗例3:床用と壁用を間違えた
ケース
「東日本塗料のフラットベースFを外壁に使用したが、期待した仕上がりにならなかった」
対策
- 東日本塗料「フラットベースF」は床用塗料専用
- 用途特化型の製品は、他の用途には使用不可
- 汎用性を求めるなら、日本ペイントのマルチフラットベーススーパーなど
失敗例4:添加上限を超えた
ケース
「もっと艶を消したくて、推奨量以上を添加したら、塗膜が白濁した」
対策
- 各製品には添加上限がある
- エスケー化研:最大30%
- 日本ペイント:最大約70%(全艶消し時)
- 上限を超えると、塗膜性能が著しく低下
- 全艶消しが欲しい場合は、最初から艶消し塗料を選択
プロが推奨するメーカー・製品ランキング
総合評価トップ3
🥇 1位:関西ペイント「レタンPGエコ つや消し剤」
- 理由:塗膜性能の低下が最も少ない
- つやムラになりにくい
- プロの塗装業者の評価が高い
🥈 2位:日本ペイント「1液ファインウレタンU100フラットベース」
- 理由:汎用性が高く、計量カップ付で使いやすい
- 艶調整の幅が広い(7分艶~艶消し)
- 入手しやすさも◎
🥉 3位:エスケー化研「SKつや消し剤」
- 理由:経済性に優れる
- 小面積の艶調整に便利
- ただし使用制限が多いため3位
用途別ベストチョイス
外壁塗装のプロ向け
→ 関西ペイント「レタンPGエコ つや消し剤」
DIYユーザー向け
→ 日本ペイント「1液ファインウレタンU100フラットベース」
(計量カップ付で初心者にも優しい)
コストパフォーマンス重視
→ エスケー化研「SKつや消し剤」
自動車補修
→ ロックペイント「マルチフラット」
まとめ:フラットベースは「万能」ではない
フラットベース(艶消し調整剤)は、確かに便利な製品です。しかし、便利さの裏には必ず代償があるということを理解しておく必要があります。
主な落とし穴のまとめ
- 耐候性・耐久性の低下(1.5~3年短縮)
- 汚れやすさ
- 色が濃く見える
- ムラが出やすい
- コスト増
賢い選択のために
- 最初から艶消し塗料を選ぶ方が品質安定
- 5分艶程度がバランスが良い
- 艶の変化だけでなく、性能面も重視
- サンプルで実物確認を徹底
- 信頼できる塗装業者に相談
メーカー選択のチェックリスト
✅ 使用する塗料のメーカーと合っているか?
✅ 水性用・溶剤用の種別は正しいか?
✅ 1液型・2液型の区別は合っているか?
✅ 使用不可の塗料に該当していないか?
✅ 添加量の上限を把握しているか?
✅ 付属の計量カップや指示書はあるか?
最終アドバイス
- メーカー純正品を選ぶ
他社製品との混合は避ける - 製品説明書を熟読
使用不可塗料、添加上限を確認 - テスト塗装を実施
本番前に目立たない場所で試す - プロに相談
不安な場合は塗装業者に依頼 - 性能低下を理解
艶を落とすほど耐久性も低下することを認識
外壁塗装は10年以上使うものです。一時的な見た目だけでなく、長期的な性能とメンテナンス性も考慮して、後悔のない選択をしましょう。


コメント